
春を告げる、日本生まれの名作「チェリーブロッサム」。プロが拘るレシピの黄金比とは?
💡Bartender's Note
チェリー・ブロッサム(Cherry Blossom)
日本が生んだ、世界に愛される「桜」
カクテルには数多くの物語がありますが、「チェリーブロッサム」は特別な存在です。
1920年代、横浜の地で生まれたこのカクテルは、今や世界中のバーテンダーがそのレシピを競うスタンダードとなりました。
「桜」の名を冠しながらも、その味わいは決して甘ったるいだけではありません。
一般的なレシピと、その魅力
まずは、多くのカクテルブックに載っている標準的な構成を見てみましょう。
- チェリーブランデー(リキュール): 30ml
- ブランデー: 30ml
- オレンジキュラソー: 2.5ml
- レモンジュース: 10ml
- グレナデンシロップ: 2.5ml
リキュールを主体にすることで、チェリーの甘い香りが前面に出た、デザートのような親しみやすさが特徴です。

私が作る、プロの「チェリーブロッサム」
一方で、私はより「お酒としての骨格」を大切にした構成を好みます。
甘美な香りを残しつつ、後味はあくまでドライに。
- ブランデー: 25ml
- チェリーヒーリング(リキュール): 18ml
- オレンジキュラソー: 5ml
- レモンジュース: 10ml
- グレナデンシロップ: 2ml
こだわりポイント:
ブランデーの比率を高め、リキュールには深みのある「チェリーヒーリング」を。
キュラソーのオレンジの苦味を少し強調し、レモンの酸味で全体を引き締めます。
見た目は艶やかなブラウンを帯びた赤色ですが、一口飲めばブランデーの芳醇さとレモンのキレが走り、食後の一杯として最高の一時を演出します。

このカクテルを楽しむコツ
チェリーブロッサムは、その名の通り「桜」をイメージしていますが、実際の桜の花びらは使いません。
チェリーと柑橘の複雑な重なりから、飲む人の心の中に「桜」を浮かび上がらせる。
そんな情緒的な楽しみ方ができる一杯です。
「甘いのはちょっと…」という方にこそ、このブランデー主体のレシピで、その意外なほどの「さっぱり感」を体験していただきたいですね。
Data & History
Standard Recipe
Strength
25%~30%
History
このカクテルは、大正から昭和初期にかけて横浜「ニューグランド」の初代バーテンダーを務めた田村 正久(たむら まさひさ)氏によって考案されました。 誕生の背景: 1920年代から30年代にかけて、当時「東洋一のホテル」と称されたニューグランドで生まれました。 世界への普及: 1930年にロンドンで出版された、世界最高のカクテルブックのバイブル『サヴォイ・カクテルブック(The Savoy Cocktail Book)』に掲載されたことで、その名は瞬く間に世界中へと広がりました。 特徴: 桜の季節をイメージして作られていますが、材料に本物の桜の花や葉は使われません。チェリーブランデーの甘みとコク、そしてレモンの酸味で「日本人の美意識」を表現した傑作です。