こっそり指摘

お店の「不手際」への向き合い方。スマートな指摘が、良いバーを育てる。

著者: hik

サービスへの期待値は「場所」で変わる

ホテルのメインバー、親しみやすい街場のバー、活気ある居酒屋。
私たちが店に求めるサービスの閾値は、場所によって異なります。
全ての店に同じ完璧さを求める必要はありませんが、
「自分が求めているサービス > 実際の提供内容(不手際)」
となった時、そこには改善のヒントが隠れています。

大切なのは、前回の記事でも触れた
「その場で直してほしいのか(A)」、あるいは
「今後良くなってほしいのか(B)」という意思表示です。

即座に伝えるべき「致命的なバグ」

以下のケースは、見つけ次第すぐに伝えましょう。
時間が経つほど事実確認が難しくなり、お互いに気まずい思いをします。

  • 異物混入、グラスのチップ(欠け):安全に関わる問題です。
  • オーダーミス:作り直しのリードタイムを最小限にするため。

もし大切な連れ様がいる場合は、席で声を荒らげるのではなく、自分が離席する際や、連れ様が席を立った瞬間にスタッフへそっと伝えてください。
この「配慮」こそが、大人の余裕というものです。

「モヤモヤ」は会計の直前にデプロイする

「接客が少し雑だった」
「なんとなく期待と違った」。
そんな「気にしてないけれど、少しモヤモヤする」といった指摘は、会計をお願いする直前がベストタイミングです。

  • 理由1
    早すぎると、その後のサービスの空気がギクシャクしてしまいます。
  • 理由2
    会計中に伝えると、レジ作業を止め、他のお客様を待たせてしまう「ボトルネック」になります。

伝える相手も重要です。
スタッフ同士の連携が取れている店なら本人へ、少し不安を感じるならその日の責任者(マネージャー)へ。
「もっとこの店が好きになりたいから」というニュアンスを含めて伝えると、プロはそれを真摯に受け止めます。

会計前に

決して口にしてはいけない「お金」の話

最も重要なルールです。
不手際を指摘する際、「だから安くしろ」「タダにしろ」という金銭的な要求を口にすることは、大人の作法としてNGです。

不手際に対して「代金を受け取らない」「サービス品を出す」といった判断をするのは、あくまでお店側です。
客側からお金を絡めてしまうと、それは正当な指摘ではなく、単なる「クレーム(苦情)」へと格下げされてしまいます。

結びに:指摘は「また来たい」のサイン

何も言わずに去るお客様は、二度と戻ってきません。
不手際を伝え、お店に改善のチャンスをくれるお客様こそ、バーテンダーにとって最も大切にすべき存在です。
あなたのスマートな一言が、お店を、そしてバーテンダーを一段上のプロフェッショナルへと引き上げる「種」になるのです。

育てる種