シャンパンの持ち込み

お酒やケーキの「持ち込み」はOK?元ホテルバーテンダーが明かす、価格とリスクの裏事情

著者: hik

「持ち込み」にまつわる、お店とお客様の温度差

大切な記念日や大きな打ち上げの席。
「どうしてもこの特別なシャンパンを開けたい」
「主役に内緒で誕生日のケーキサプライズをしたい」と考えるのは自然なことです。

しかし、結論から申し上げますと、ホテルのラウンジやバーにおけるアイテムの持ち込み対応は、
「基本的には非常に厳しく制限されている」というのが現実です。もちろんホテルによってルールは異なりますが、そこには単なる「意地悪」ではなく、明確な経営上のロジックとリスク管理が存在します。

今回は、普段はなかなか見えにくい「持ち込み」にまつわるバーの裏事情と、スマートな大人の解決策をお話しします。

ワインの持ち込み

1. お酒の持ち込み:なぜ「持ち込み料」だけで解決しないのか?

多くのホテルバーでは、お酒を持ち込む際に「コーケージ(持ち込み料)」が発生します。
相場はウイスキーやワインなどの種類によっても変わりますが、1本あたり10,000円といった高額に設定されていることも珍しくありません。

これに対して、
「仕入れ値がかからないんだから、持ち込み料の分だけホテルの利益になって丸儲けじゃないの?」と言われることがあります。

確かに一見そう思えますが、実はここに大きな落とし穴があります。
例えば5名様でご来店され、お店のワインを数本ご注文いただくのと、持ち込まれた1本のワインを5名様で分けて過ごされるのとでは、全体の売り上げが全く異なるのです。
ホテルの料金設定は、単なる液体の価格ではありません。
一等地の立地、洗練された空間、そして多くのプロフェッショナルな従業員の手厚いサービス維持費が含まれています。
そのため、持ち込みだけでは
「お互いが豊かになる関係(ウィンウィン)」が成立しなくなってしまうのです。

また、常連になればなるほど
「この珍しいウイスキーを持ち込んでボトルキープさせてほしい」と頼まれることがありますが、これは最も避けていただきたい行為です。
お酒はお客様が調達し、お店側にはサービスの手間だけを求められてしまうと、どれだけ懇意にしていただいていても、お店としては非常に苦しい立場になってしまいます。

2. ケーキの持ち込み:プロが最も懸念する「見えないリスク」

次に、誕生日のケーキなどの食品の持ち込みについてです。
こちらも対応は分かれますが、バーテンダーやホテル側が最も懸念しているのは、実は「アレルギー対応」と「衛生上の責任問題」です。

万が一、持ち込まれたケーキを食べて体調を崩されたり、アレルギー症状が出てしまったりした場合、その原因が
「元々のケーキ」にあるのか、
「ホテルの保管方法や切り分けの器具」にあるのか、あるいは
「お客様ご本人の体調」によるものなのか、適切な原因究明や責任の所在が非常に曖昧になってしまいます。
お客様の安全を第一に守るホテルだからこそ、安全性が担保できない外部の食品に対しては、慎重にならざるを得ないのです。

ケーキの持ち込み

結びに:メニューにないものは「まず相談」が最高の作法

それでは、特別な日を諦めるしかないのでしょうか?
決してそんなことはありません。
最もスマートな解決策は、
「事前にスタッフへ相談すること」です。

特に大きなパーティーや記念日の場合、事前に相談していただければ、お店側で同じ銘柄のお酒を手配したり、ホテルのパティスリーで作られた安心・安全でクオリティの高い特製ケーキをご用意することが可能です。

お店のルールと空間をリクエストという形で尊重しつつ、プロの手を借りて最高の演出を行う。これこそが、一流のバーで最も歓迎される「大人の嗜み」です。