
「心を磨く」朝のルーティン。デッキブラシから始まる、プロの衛生と心構え
|著者: hik
華やかな夜を支える、泥臭い朝
バーテンダーといえば、夜のカウンターで優雅にシェイカーを振る姿を想像されるかもしれません。
しかし、その裏側にあるのは、驚くほどストイックな「掃除」の積み重ねです。
仕込みを担当する朝のチームには明確な役割分担がありました。
- 電話・予約応対:お客様との最初の接点を守る。
- ジュース絞り・フルーツカット:その日の「味」の根幹を作る。
- 出庫と発注:在庫を管理し、営業の血液を回す。
- 掃除・手入れ:新人の主な仕事は「掃除」と、お客様が触れるシルバーや皿の徹底した手入れでした。
先輩の出勤前に「床をピカピカに」
私がいた頃は、先輩たちが朝起きる前に、カウンターの中の床や、パントリー内を完璧に磨き上げておくのが不文律でした。
現代の価値観では「サービス残業」や「パワハラ」と捉えられるかもしれませんが、当時の私たちにとっては、誰よりも早く起きて練習し、そして場を清めることは、プロとしての通過儀礼でもありました。
汚れが落ちなければ漂白剤を使い、徹底して白く、清潔に保つ。
飲食店として当然の衛生管理ですが、私たちの掃除はそれを超えた「執念」に近いものがありました。
「心を磨く」という独自の美学
なぜ、そこまで細部にこだわるのか?
それは単なる清掃ではなく、「心を磨くこと」だったのだと、今になって痛感します。
目に見えない隅っこの汚れに気づけるか、お客様が触れる一皿の指紋を見逃さないか。
その細かい気遣いこそが、夜のカウンターでお客様のわずかな表情の変化や、グラスの空き具合を察知する「心構え」に繋がっていました。
掃除を通して先輩に対する敬意を表し、場を整える。
全てはそこから始まっていきます。

結びに
デッキブラシを握り、床を磨き続けたあの時間は、技術以前に大切な「サービスマンとしての魂」を教えてくれました。
直接は関係なさそうなことも、巡り巡ってお客様のためになる。
それを長年、先輩たちから継承していきます。
そんな背景を少しでも理解していただけると、バーテンダーも嬉しいのかなと思います。
